広島女性川柳会作品集
広島女性川柳会推奨作品展 出典作品集
ご挨拶
私たちは、人間なら誰でも持っている滑稽と哀愁を、品よく詠んで、皆さんの心をやすらげ、どなたからも愛される文芸川柳を心がけて作句しています。
どうぞごゆっくりご覧下さいませ。
森脇 幽香里
作品 作者
外出中消防サイレン気にかかり 浅井 香州子
老化とは言われたくない痛むひざ 伊藤 幸
孫がいて笑顔たえない家の中 生田 澄江
余生にも義理つきまとう世間並み 稲垣 のぼる
文芸が生かしてくれる喜寿迎え 植月 六花
何年ぶりの着物嬉しく手を通し 内田 雪枝
口と手が同時に話す立ち話 円並地 政江
朝刊を拾い読みしてまた眠り 大下 綾女
しっぽ振り飛びつく犬をなでてやり 大畠 初子
草花も日向の方へ向いて咲き 大前 明泉
銀婚を迎え夫が近く見え 岡田 ミドリ
一坪の畠が四季の夢をくれ 沖野 久子
老人ツアー食後はみんな薬飲み 沖原 シズエ
歯を削る音に聞き耳よってゆき 沖原 純子
茶柱が立った茶托がとれて落ち 梶本 忠司
水やりに鉢それぞれの癖を知り 川村 静歩
孫いれば私もなりたいばばの馬 河村 千代
久しぶり友と話して元気が出 久保田 ナオミ
便りなき戦友の声聞き頬ゆるむ 久保田 芳蘭
島々に橋が架かって国土増え 小林 平治郎
おぼろ夜の階段一つ踏み外し 河野 昌子
小きざみに風景揺れる地震報 佐川 和代
掌に木の芽の香りまだ残り 志水 京
片方は後ろ向いてたイヤリング 新良貴 里香女
主義主張ないかのように隅にいる 篠原 一省
子守りより仕事が楽と祖母ぼやき 白砂 実恵子
赤ちゃんのような新芽にそっとふれ 新藤 月恵
十五分ずらし目覚し二ツ置き 末次 敏子
どん底を見て来て心丸くなり 末永 ハズエ
宝くじ的が廻ってきまる運 菅原 まさ子
ガス工事見ている猫の好奇心 世良 今日子
色を変え命を守る虫の知恵 高木 すみ江
念ばかり押してる孫の肩たたき 高田 和夫
朝堀りのタケノコ土間を湿らせる 高田 尚子
遠慮して電話をせねば気遣われ 高野 ヨシ子
飛び跳ねたのが嘘のよう犬ねむり 高橋 沙和
敬老で訪ねた母に励まされ 竹野 まゆみ
辛い時好転夢見て今を生き 谷川 実子
寄付集め一言添える気もつかい 谷口 知栄
野良猫も縄張り日課のパトロール 胤森 弥生
五パーセントやりくり家計惚けられず 近松 のぶよ
大金は無いが子がいる孫がいる 津村 栄子
仲良しが転宅孫も知る別れ 津村 明正
事件には金がつきものこわい金 築出 とみ子
旅の宿土産の数を指で折り 土井 実
この薬飲めば死ぬまで生きられる 冨田 頑坊
バーゲンのバッグ一個へ疲れ果て 田中 寿万子
孫去んで静かな日々にまた戻り 中村 キヨ子
心配はないのに親は心配し 長尾 香芳
子の笑顔見れば長生きしたくなり 鍋屋 コズエ
縄のれん仕事仲間で酌み交わし 鍋屋 正明
口ほどに用事の出来ぬ老いの日々 二井谷 絹子
慶びへ親子レンズに円く入り 西岡 昌子
雑草もこの世に生まれ生きており 西川 美千子
墓石を洗えばやさしい色になり 温井 水鳥
竹の子をいのしし先に掘って食べ 野田 富江
点滴の針の行方が定まらず 長谷川 しのぶ
むすんでは指のご飯を口で取り 橋本 雄節
ハンドルに魚を選った手が匂い 浜田 のどか
そうめんをつつっとひと吸い喉に下り 原 幽貴
食べねばと食べて無理やり生きており 馬場 木公
お客来る日へ指を折り高菜漬け 平岡 里水
広島の空気はうまいと孫帰り 平野 百合子
かんざしのようにもくれん丘に咲き 福岡 まさこ
けなげにも排気に負けず咲くつつじ 藤井 香世子
痛む腰なだめりゃひざが笑いだし 藤川 幻詩
うどん屋の婆様しかと店捌き 二上 徳子
ふるさとの自慢ホタルも育つ川 本間 猛郎
一服のお茶が和みをくれる朝 間下 小夜子
紅く燃え沈む陽包む海があり 前田 芳枝
一病を癒す薬が他を害し 前原 しづ
締めくくり炭坑節で一周し 政岡 婦美代
孫が来てひとり暮らしに花が咲き 増田 シズヨ
権力に刃向かう術ないムツゴロウ 松本 進
さようなら笑顔だんだんくずれてき 松本 多香子
日帰りの旅もためらう年令となり 三上 文江
気まぐれに夫の靴をみな磨き 水中 香絵
宇宙から見れば地球は蟻の巣か 水永 タミ江
おんぶしてと来る嬉しさに呆けられず 光成 ヤエ
湯の旅の泊まり菖蒲の宿と決め 柳井 香風
亡母の歳追い越しなおも母を恋い 山内 裕子
湯の中ではしゃぐ孫らのしぶき浴び 山岡 幸恵
空席の前へ吊革持って立ち 山川 芙美子
爺の顔孫見る時は目が違い 横山 文子
初孫を抱いて爺ちゃんかたくなり 吉岡 里江
当てにせず当てにされずの七十路 吉田 義孝
どの今も刻々過去になって行き 森脇 幽香里
この作品は平成9年6月30日から7月11日まで広島銀行本店ロビーに掲示されたものです。
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