川柳入門講座(その一)


短詩型文芸

まず、川柳とは何かと言うことについて、概略からご説明しましょう。
簡単に言いますと川柳は、十七音字の定型で成り立っている短詩型文芸です。今日川柳と呼ばれるものには二つあります。まず、皆さんが新聞やテレビから入る今日の出来事を題材にして十七音字に詠まれるのが「時事川柳」というものです。それから、私たちが句会に集まって、題を出して詠んだり、また、自分の思いつくことを自由に十七音字に詠んでいるのを私たちが「文芸川柳」といっているものです。

川柳の作り方、その掴みどころ

簡単に言ってみますと、私たちは、誰でも、眠っている間以外は、四六時中何かを考えたり、思ったりしていますよね。見たり聞いたり読んだりすることが、すぐ頭に人るからですが、一度頭に入ってから、それが考えになったり、思いになったりするのは、誰の頭の中にも、長い間に作られた自分なりの常識というものがちやんとあるからです。それでその常識に照らし合わせて誰にでも考えや思いが起きるのです。
このようなことは、みんな分かっていられる、と思いますが、皆さんも朝起きてから今まででも、何も見なかった、何一つ間かなかった、考えなかった、ということは、決してなかったと思います。朝起きるまでにでも、床のなかで音を聞くと、「あっ、また猫が屋根を歩いてるぞ」と思ったり、「やっと今新間が来たわい」と思ったりします。
こんな取るに足らないようなことでも、みな耳から入って頭で考えているのです。そういう事柄の一つ一つを、五と七と五に組み合わせて、十七字にすれば、朝の詩の一句が出来るのです。
こんなありふれたことは、これだけでは句にもなりませんが、川柳の基本はそこにあるのです。
ここから出て、ここより上の作品にする工夫は、皆さん一人一人の腕にかかっていると言えます。
川柳には難しい言葉は要りません。きどることも不要です。使う言葉は、普通に生活で使っている話し言葉で良いのです。高等教育を受けて、言葉を沢山知っていなければ、良い川柳は詠(よ)めない、という風に思ったり、言ったり、している人もあるようですが、川柳を詠むのは、知識ではなく知恵なんです。知恵は学校とは関係なく、生きて暮らしているうちに、ひとりでにつくものなんです。長く生きて暮らしているうちに、だんだんと、つくものなんです。知恵と知識の違いは、知っておかれたら良いと思います。そこで、一句例句を詠んでみます。朝子供が学佼へ出かけるまでの様子を句にしてみますと、

      時計見てまだ出かけない子を叱り

と、何でもないことですが、句を作るのは、こんな具合で良いのです。
川柳は、先ず、あったこと、思ったことを、素直に十七音字にすることから始めれば良いのです。川柳は、生活の中で起こる何でもないことでも、十七音字にしてみると、そこに正直な人間の姿の、微笑ましい情景の一句を生むことが出来るのです。
今日皆さんが会われた出来事の中に、気がつかれたことはありませんでしたか。若しあったら、今私が作ったように、作ってみて下さい。初めてのことですから、うまく出来なくても、恥ずかしがらずに作ってみて下さい。


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このページは、森脇幽香里監修のもと、森脇幽香里著「川柳入門書」より抜粋されています。